脳を守る為、睡眠の重要性

睡眠は脳内の老廃物を取り去る重要な働きがある。

充分な睡眠時間と深い睡眠は健康の維持にとって非常に重要である。

マンガ家の水木しげる氏(1922年~2015年)(93歳没)は、

ご自身の短編漫画「睡眠のチカラ」の中で

「私は徹夜2日目」「僕は徹夜3日目」と

徹夜自慢をするマンガ家の

手塚治虫氏と石ノ森章太郎氏に対して

「あんたたち、睡眠を馬鹿にしてはいけません。

眠っている時間分だけ長生きするんです。

幸せなんかも睡眠力から湧いてくる。

睡眠力こそが、すべての源(みなもと)です。」

と説教するシーンが描かれています。

手塚治虫氏は61歳で胃ガンによって

亡くなられています。

睡眠時間はつねに3~4時間で、

漫画の締め切りが迫ると

連続して徹夜することもあったといいます。

石ノ森章太郎氏も同じく血液のガンである

リンパ腫による心不全が原因で

わずか60歳で亡くなっています。

睡眠時間は3時間ほどしか取らず、何本も連載を抱え、

ハードワークをこなしていたそうです。

世間では「睡眠時間を削って仕事に邁進(まいしん)することが

成功の道だ。」

という風潮がありますが、その結果、短命に終わる人が多いのも

紛れもない事実であります。

アメリカの元大統領、ドナルド・レーガン氏や

イギリスの元首相マーガレット・サッチャー氏は

晩年、アルツハイマー病を発症した。

両氏とも睡眠時間が短く、

一日の平均睡眠時間が約5時間程度であったそうだ。

また、アメリカ元大統領、トランプ大統領は

一日の平均睡眠時間が約2時間程度だそうだ。

最近の研究では睡眠時間の短いことが認知症や

アルツハイマー病の発症リスクを高める事が

次第に分かってきている。

一方、長時間睡眠、いわゆるロングスリーパとして有名な、

世界的な物理学者アインシュタイン博士は

一日の平均睡眠時間が約10時間程度であった。

過去、ノーベル物理学賞を受賞した日本の小柴博士も

一日の平均睡眠時間は約10時間程度。

また、東京大学に合格した学生の平均睡眠時間は

約7時間程度という調査結果がある。

ところで、睡眠の話とは別の話に変わるが、

車の衝突事故に遭ったり、転んで頭を強く打ってしまうと、

脳に深刻な損傷がおよぶ心配がある。

例えば、全米フットボールリーグ(NFL)の30歳から

49歳の選手たちが、アルツハイマー病、

その他の記憶障害の出る病気になる確率は、

同年齢の平均男性の19倍だという調査結果を

ミシガン大学が発表した。

ボクシング、ホッケー、ラグビー、サッカー、

レスリングなどの頭を強打する頻度が比較的に多いスポーツは

練習中や試合中において、頭を強打し、

脳震盪を起こしやすく、それにより、

将来、アルツハイマー病になるリスクが高くなります。

実際に世界各国の大学でそのような調査結果が報告されています。

また、拳闘家痴呆という病名があります。

一般的にボクサー、いわゆる拳闘家は

練習中や試合中において、頭を打たれる事が多く

頭部外傷を受ける頻度が高い。

ボクサーの脳波の異常頻度が高い事が知られている。

ボクサーは若いにもかかわらず、

ぼけの出現する事が多いと言われている。

今は亡き、ボクシング世界チャンピオンでもあった、

あの世界的に有名なモハメッド・アリ氏も

パンチドランカーであり、その影響によるアルツハイマー病でもあった。

アリ氏は引退から3年後の42歳で

パーキンソン病と診断された。

引退後、亡くなるまでパーキンソン病を30年以上も患った。

多くの専門家は、アリ氏がパーキンソン病を

患ったのは悲劇的な結末とみている。

当時の専門家は、現役時代に何度も脳振とうを

経験したスポーツ選手にみられる脳の損傷を

「パンチドランカー」、「パンチドランク症候群」と表現した。

ボクシングとパーキンソン病の関連について、

ある医師は

「頭部への打撃を繰り返し受けると、

特に休むことなく動いている脳においては、

神経細胞が変質することが判明している」と言及している。

さて、睡眠の話に戻るが、

書籍「100歳まで元気でぽっくり逝ける眠り方  

大谷 憲 (著), 片平 健一郎 (著)」の中で

著者は次のように睡眠不足や徹夜は脳細胞を破壊し

ボケ、認知症の原因になる事を説明されている。

「睡眠不足が続くと 大脳がダメージを受けます。

徹夜などしていると脳細胞が破壊され

物忘れをするようになります。

それくらいならまだいいですが、

それが積み重なると記憶障害を引き起こします。

つまり睡眠不足の人は認知症やアルツハイマーなど

ボケの症状が出るリスクが高まるのです。
 
脳細胞の毛細血管への血流が悪くなることも

ボケにつながります。

睡眠が十分に取れず脳に血液が行き渡らないと

脳細胞がどんどん死んでいきます。

規則正しい生活をしている人は年齢を重ねるに従って

脳細胞が徐々に少なくなっていきますが

認知症やアルツハイマーは脳細胞が急速に死んでしまうことで

引き起こされる病気なのです。
 
やはり十分な睡眠をとって生体のリズムを保つことが

ボケを防ぐ一番効果的な方法なのです。
 
睡眠薬や高血圧などの薬を飲んでいる人も

ボケやすいと言われています。

高齢者などは骨折や体の痛みから眠れなくなって

睡眠薬に頼りがちですが、睡眠薬は脳に作用するので

細胞を破壊することにつながります。
 
血圧の薬も血管を拡張することによって

脳に血液を行き渡りにくくする恐れがあります。

あまり知られていないことですが認知症や

パーキンソン病の薬を飲むと症状は緩和したように見えても

脳の細胞が死んでいく。」

さて、書籍、「自分を変える睡眠のルール 千田琢哉著」の中で

著者の千田氏は熟睡の効果について次のように説明している。

「起きている間はどんなに落ち込んでいても、

熟睡して目が覚めるとすこぶる気分が良くなっているだろう。

もちろん、昨夜の嫌な出来事がゼロになっているわけではないが、

少なくとも半減しているはずだ。

大抵は、よく考えたら大した事じゃなかったな。

やっちゃったことは今さら仕方がないか。

というように、かなり前向きになっているものだ。

これは脳があなたの睡眠中に生まれてから

今日までの記憶の編集作業をしてくれたおかげだ。
 
リアルタイムではかなり刺激的なことでも、

時間が経つと冷静になるのは脳が編集作業をして、

より客観的に状況を把握できるようにするなるためだ。
 
熟睡は精神を回復してくれるだけではない。

身体の傷が癒えるのも熟睡のおかげなのだ。

例えば、手術が終わった後はしばらく安静にして

熟睡しなければならないが、

あれはそれだけ傷の回復には熟睡が必要だから。

大手術に限らず、どんなに若くても、

お肌が荒れてくるのは睡眠が不足しているからだ。
 
我々の身体はものすごい勢いで新陳代謝を繰り返しているが、

最高のパフォーマンスを発揮するのは熟睡している場合だ。」

と書かれている。

さて、睡眠は単なる体や脳の機能停止だけではない。

眠りは「サボり」と考えるような睡眠をネガティブ、

マイナスに捉える方々でも、

眠ることで脳や体が回復することは疑わないであろう。

眠りが単なる機能停止ならば、なにも起こらない、回復もしない。

さらに、睡眠は体や脳の回復とともに、

様々なメンテナンスの機能を持ち合わせている。

「寝る子は育つ。」「風邪は寝て治す。」

これも睡眠の機能を端的に表している。

「寝る。」「眠る。」つまり活動を減らすことで

エネルギーの消費を抑え、

その分のエネルギーを成長や免疫活性化に充ててる。

限られたエネルギーの再分配の仕組みである。

さらにまた、我々の脳は実に様々な働きをするが、

その活動の結果として、脳内に大量の老廃物が生まれる。

それらは全て排除しなければならない。

その脳内の老廃物を取り除く事で、文字通り、

新たな成長や発達の余地が生まれるからだ。

死んだ細胞の除去やリサイクル、有害物質の排除、

老廃物の排出は脳を機能するうえで絶対に欠かせない。

最近の研究で判明したことは、 眠っている間の老廃物を

除去する活動は目覚めている間の10倍以上、

老廃物を除去する活動が活発になるという。

目覚めているときの脳は学習や成長に勤め、

脳の持ち主が活躍できるよう協力している。

ずっと動きっぱなしなので、

たくさんの老廃物がたまっていくが、

そのほとんどは睡眠が持つ修復の力で除去される。

充分な睡眠をとらず、その老廃物を除去する働きがなければ

脳内が大変なことになる。

有害な老廃物を除去する事が無いことが

アルツハイマー病を発症する根本的な原因の一つだと言われている。

書籍「スタンフォード大学教授が教える熟睡の習慣 

西野精治著 PHP出版 」によると

高齢アルツハイマーの方々、約数百人とその配偶者、

数百人を対象に認知症と昼寝との関連性を調査した。

その調査の結果、

30分未満の昼寝をする人は昼寝の習慣がない人に比べて

認知症発病率が約7分の1。

30分から60分の昼寝をする人も昼寝の習慣がない人に比べて

認知症発病率が半分以下であった事が判明した。

睡眠は非常に大事である。

夜更かしや徹夜をすると、脳の働きが低下し、

認知症やボケの原因になりやすい。

また、免疫力の低下により風邪をひきやすくなったり、

病気になりやすくなる。

慢性的な睡眠不足が続くと健康上の問題を引き起こし易くなる。

例えば、脳梗塞、クモ膜下出血、心臓病、認知症などの

健康上に大きな支障が生じるリスクが高くなる。

日常生活を営む上においても慢性的な睡眠不足が続くと

些細な事で非常にキレ易く、怒り易くなり家族関係や

人間関係にも支障が生じ易くなる。

仕事やビジネス面において単純なミス、もの忘れ、

凡ミスなどを繰り返したりする事が多くなる。

過去に起きたチェルノブイリ原発事故などの大きな事故も

作業員の睡眠不足が原因で起きたとされている。

特に深夜作業をする際には眠気が誘発され作業ミスが

起きやすくなるとされている。

ところで、 睡眠で確実に疲れを取るには適切な睡眠環境が必要である。

すなわち、

真っ暗な寝室、

静かな寝室、

適度な室温、

適度な湿度、

新鮮な空気を供給し続ける換気。

適度な睡眠時間、7時間~9時間。

睡眠前に風呂に入り、体温が下降すると眠気が訪れる。

遮光カーテンや加湿器などの設置が望ましい。

街灯の照明の光が入り込む明るい部屋でいくら睡眠を取っても

深い睡眠は得にくい。

疲れも取れにくい。

快適な目覚めも得にくい。

遮光カーテンやアイマスクの活用が必要である。

また、快適な睡眠を取る為には、

出来るだけ部屋を真っ暗にした状態にし、

極力、目に光が入らないようにした方が良い。

それが難しければアイマスクなど、

目に光が入らないような工夫も必要である。

目に光が瞼(まぶた)を通して入ると

睡眠誘発物質であるメラトニン物質が

充分に分泌されにくくなり、

深い睡眠に入りにくく、

寝覚めの疲れが残った感じがする。。

真っ暗な状態にして寝ることが重要である。

電球をつけて寝るのと真っ暗闇で寝るのとでは、

まぶたを通して光が入ってくるので

確かに目を閉じていても寝にくい感じがする。

起きてからも目が痛い状態が続いた経験もしている。

寝室に遮光カーテンを着け

窓からの街灯の光が入ってこないようにする。

デジタル時計などの光を発し続けるものを

寝室から取り除く。 

睡眠の専門家は、顔の前に手をもってきても

見えないくらいの暗闇で寝ることを奨励している。

アメリカ フィラデルフィアにある

ペンシルベニア大学シェイエ眼科研究所の研究チームが、

小さな豆電球一つでも子供の近視が進む一因となり、

大人になってから深刻な視覚障害を招く恐れがある

と発表した。

彼らは2歳未満の子供479人を三つのグループに分けた。

真っ暗の中で寝る子供、

豆電球が一つついた状態で寝る子供、

電球をつけた状態で寝る子供だ。

真っ暗の中で寝た場合、

将来的に近視になった子供は10%だったが、

豆電球の部屋で寝た子供は34%、電球をつけた部屋で

寝た子供に至っては55%が近視になった。

私たちの遺伝子は、暗闇で眠る事を当たり前だと思っている。

いまは部屋のなかで何かしらの光が一晩中ついていることも

珍しくもない。

最近の車のヘッドライトや街灯には、

LEDが使用されるようになった。

LEDは、光の中でも特に睡眠の妨げとなる。

だからこそ、遮光カーテンは必要だ。

寝室を真っ暗にするよう、暗闇に変えるべく行動をおこそう。

また、 胃が満腹した状態直後の睡眠は

胃潰瘍の原因にもなりやすいので、

せめて、睡眠3時間前から入眠までの時間帯は

食事は極力控えた方がよい。

仏教では夜食を禁じているが、それは理にかなっている。

ところで、食後の休息を仏教の聖典である

パーリ聖典において昼住(ちゅうじゅう)という。

この習慣は現在の東南アジアの僧院でよく見かける。

また、スペインやアルゼンチンなどの

ラテン系の国々では昼食後の休息に数時間、当てている。

この昼食後の休息をシエスタという。

この習慣は、中国・インド・ベトナムなどの

熱帯・亜熱帯地域や地中海性気候である

地中海沿岸のギリシャ・イタリア・中東・北アフリカでも

一般的に見られる。

一般的に人間の活動力は、午前中は上昇、正午頃が最も高く、

午後2~3時ごろにかけて活動が低下するが、

午後4時すぎに再び上昇に転じ数時間活性化した後、

就寝時間に向けて再び低下する。

就寝中の深夜2~3時が最も活動力が最低となる。

仏教学の世界的権威、故中村元博士は仏教教団、

阿含宗の機関紙である月刊アーガマ42号において

釈尊が食事の後よく昼寝をされたことを

微笑ましく指摘されている。

当時の厳格な修行者からすると、

昼寝をする事はダラシのない事であり、

怠惰なふるまいであったと考えられた。

当然、釈尊に対しても次のような非難が向けられていた。

ある日、サッチャカという修行者が釈尊に次のように言った。

「ゴータマ(釈尊)よ。

あなたは昼寝をする者である事を認識しているのですか。」

釈尊は、次のように答えた。

「私は托鉢から帰ってきて食事をし、

その後、大衣を四つ折りにし、

その上に、右脇を横たえ、

自らの心の動きを観察しながら眠りに入る事があります。

だから自分が昼寝をする者である事をよく認識していますよ。」

サッチャカが言った。

「ゴータマ(釈尊)よ。

修行者やバラモンのある者は迷っているから、

そんな事を語るのです。」

釈尊は静かにこう答えた。

「食後の昼寝をした、しないだけで、

迷っているとか、迷っていないだとか、言えませんよ。」

と説かれている。

さて、次に、2019年に出版された

書籍「スタンフォード大学教授が教える熟睡の習慣 

西野精治著 PHP出版 」において

昼寝と認知症との関係を調査した結果が記載されている。

ある高齢アルツハイマーの方々とその配偶者、

約数百人を対象にした調査の結果、

30分未満の昼寝をする人は、

昼寝の習慣がない人に比べて

認知症発病率が約7分の1であった。

30分から60分の昼寝をする人も

昼寝の習慣がない人に比べて

認知症発病率が半分以下であった。

という調査結果が出た。

書籍「スタンフォード大学教授が教える熟睡の習慣 

西野精治著 PHP出版 」176頁参照

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