高濃度酸素吸引(酸素吸引器)による失明の危険性について

今回は高濃度酸素吸引の危険性についての話を紹介したいと思う。

先日、書籍「身のまわりの最先端技術雑学事典  那野 比古著 日本実業出版社」を読んでいるとその中で次のような事が書かれていた。

「 かつてこんな事件があった。

交通渋滞の激しい東京にあっては、交差点に位置する交番のおまわりさんは、排気ガスなどの汚染空気を常時吸うことになる。

おまわりさんの健康を考えて、特に汚染のひどい交差点の交番に酸素ボンベを用意し、濃い酸素を交合に吸わせることにした。

これを続けていたところ、おまわりさんの中から目に異常を訴える人が出てきた。

視野の両側が見えなくなる視野狭窄(しやきょうさく)、さらに中心部もよく見えなくなり、ついには失明という事態に発展したのだ。

未熟児などが生まれると、保育器に移し、育てられる。

わが国 (日本) では1970年代後半まで、未熟児の呼吸を助けるため、保育器の中に高濃度の酸素を送り込む措置が行われていた。

その結果、失明する赤ちゃんが続出したのである。

これは未熟児網膜症と呼ばれている。

欧米では、すでに1942年、酸素毒の問題は指摘されていたのだが、残念ながらわが国(日本)では注意が足らなかった。

未熟児網膜症は、正しくは水晶体線維増殖症(RLF)と呼ばれる。

これは網膜中を走る血管が、血液中の濃い酸素に対して特に敏感なために生ずる。

必要以上の酸素がやってくると、網膜の動脈が収縮を起こす。

これが、逆に網膜への酸素不足を引き起こす。

静脈が拡張するとともに、酸素不足を補うため、新たに毛細血管が作られ始める。

さらには、網膜の周辺から、白色の結合組織がガラス体の中に増殖していき、ガラス体の後方部にまで達してしまう。

眼球は委縮し、網膜剥離(もうまくはくり)を生じ、ついには失明するという過程となるが、これは両眼について生じ、進行性というのであるから始末が悪い。

空気中の酸素の濃度は25%である。

保育器の中の酸素濃度を40%以下に抑えれば、このような事態は防ぎ得るといわれているが、水晶体線維増殖症をひき起こす酸素の量や濃度については、まだ十分に解明されていない。

ところで、この問題は、最近一般の人も手軽に入手できる酸素吸入器に対して、ひとつの警鐘となる。

酸素は空気中にはいっぱいあり、生体に対して不可欠のものであるからには、まさかそれが毒として作用するなどとはだれも考えない。

だが、ここに落とし穴がある。

過度の酸素の吸入は、目に対し不可逆なダメージを与える恐れがある。これは十分注意しなくてはならない。

素人による酸素吸引器の扱いは禁物と心得、昔ながらの深呼吸で疲労回復を図るのが一番ということである。」

書籍

「身のまわりの最先端技術雑学事典  那野 比古著 日本実業出版社」引用。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です