睡眠の重要性

 睡眠は単なるサボりではなく、脳内の老廃物を除去する働きがある。

 眠りは脳や体の単なる機能停止ではない。

 眠りは「サボり」と考えるような睡眠をネガティブ、マイナスに捉える方々でも、眠ることで回復することは疑わないであろう。

 眠りが単なる機能停止ならば、なにも起こらない、回復もしない。

 睡眠は体や脳の回復とともに、様々なメンテナンスの機能を持ち合わせている。

 「寝る子は育つ。」「風邪は寝て治す。」これも睡眠の機能を端的に表している。

 「寝る。」「眠る。」つまり活動を減らすことでエネルギーの消費を抑え、その分のエネルギーを成長や免疫活性化に充ててる。

 限られたエネルギーの再分配の仕組みである。

 マンガ家の水木しげる氏(1922年~2015年)(93歳没)は、ご自身の短編漫画「睡眠のチカラ」の中で

「私は徹夜2日目」「僕は徹夜3日目」

 と徹夜自慢をするマンガ家の手塚治虫氏と石ノ森章太郎氏に対して

 「あんたたち、睡眠を馬鹿にしてはいけません。

 眠っている時間分だけ長生きするんです。

 幸せなんかも睡眠力から湧いてくる。

 睡眠力こそが、すべての源(みなもと)です。」

 と説教するシーンが描かれています。

 手塚治虫氏は61歳で胃ガンによって亡くなられています。

 睡眠時間はつねに3~4時間で、漫画の締め切りが迫ると連続して徹夜することもあったといいます。

 石ノ森章太郎氏も同じく血液のガンであるリンパ腫による心不全が原因でわずか60歳で亡くなっています。

 睡眠時間は3時間ほどしか取らず、何本も連載を抱えハードワークをこなしていたそうです。

 世間では「睡眠時間を削って仕事に邁進(まいしん)することが成功の道だ。」

 という風潮がありますが、その結果、短命に終わる人が多いのも紛れもない事実であります。

 ところで、東大に合格した学生の平均睡眠時間は約7時間というデータがある。

 ある学生が天才的に数学の才能がある先生に数学の極意を尋ねるとその先生の回答は

「よく寝る事だ」と答えたという話がある。

 次に、「Sleep(最高の身体と脳を作る技術)ショーンスチーブンソン著 花塚恵訳 ダイヤモンド社」という書籍があるがその書籍の中で著者は次のように書かれている。

 「老廃物を除去する脳のシステムは睡眠時に活性化する」という章の中で

 「脳は実に様々な働きをするが、その結果、大量の老廃物が生まれる。

 それらは全て排除しなければならない。

 老廃物を取り除く事で、文字通り、新たな成長や発達の余地が生まれるからだ。

 死んだ細胞の除去やリサイクル、有害物質の排除、老廃物の排出は脳を機能するうえで絶対に欠かせない。

 眠っている間の老廃物を除去する活動は目覚めている間の10倍以上老廃物を除去する活動が活発になるという。

 目覚めているときの脳は学習や成長に勤め、脳の持ち主が活躍できるよう協力している。

 ずっと動きっぱなしなので、たくさんの老廃物がたまっていくが、そのほとんどは睡眠が持つ修復の力で除去される。

 例えば、自宅のごみを捨てるシステムがとどこおれば、家はあっという間に悲惨なことになる。

 それと同じでように充分な睡眠をとらず、その老廃物を除去する働きがなければ脳内が大変なことになる。

 具体的に言うと,

 有害な老廃物を除去する事が無いことがアルツハイマー病を発症する根本的な原因の一つだと言われている。 」

 と書かれている。

 著者は

「睡眠環境を真っ暗な状態にして寝ることが重要である」

 とこの書籍の中で次のように書かれている。

 「まずは、近年、人気が高まりつつあるカーテンを遮光カーテンに替えよう。

 それから光を発し続けるものを寝室から取り除こう。

 この二つを今夜のうちに行えば、明日起きたらきっと私に感謝したくなる。

 睡眠の専門家は、顔の前に手をもってきても見えないくらいの暗闇で寝ることを奨励している。

 私たちの遺伝子は、暗闇で眠る事を当たり前だと思っている。

 いまは部屋のなかで何かしらの光が一晩中ついていることも珍しくもない。

 外の世界で起きることはどうにもならないのだから、せめて自分の家の中の事は自分の手で何とかするしかない。

 だからこそ、遮光カーテンは必要だ。

 寝室を居心地のいい暗闇に変えるべく、行動をおこそう。

 私の睡眠は暗闇に変えた瞬間からよくなった。

 寝室を真っ暗にするようになってからというもの、最高の睡眠がずっと続いている。」と書かれている。

次に、

 「睡眠不足は危険がいっぱい スタンレー・コレン著」という書籍がある。

 この中で著者は

「過去に起きたチェルノブイリ原子力発電所の原発事故、

 原始炉融解直前までいったスリーマイル島の事故、

 大規模な環境破壊につながった石油輸送船エクソン・ヴァルディーズ号の石油流出事故、

 アメリカのスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故」

 これらの事故はいずれも眠りが足りない人々によるミスが原因で起こったものだとされる。

 たしかに、睡眠不足は人の頭脳の働きや反応を鈍らせ事故を起こし易くする。

 さらに眠りが少な過ぎると人は急死することもあれば健康を損なう。

 さらに、睡眠不足は人の気分を落ち込ませ深刻な鬱病(うつびょう)を引き起こす。

 また感情のコントロールが効きにくくなり怒り易くなる。

 長距離トラック運転手、医療従事者等の睡眠不足が数々の間違い、判断の誤り、事故、そして死を起こしかねない。

 ところで、話は変わり、

 上座部仏教、いわゆるタイやビルマ、スリランカなどの仏教国が信仰している仏教聖典、いわゆるパーリ聖典によると 食後の休息の事を 昼住(ちゅうじゅう)という。

 この習慣は現在の東南アジアの僧院でよく見かける。

 インド哲学、仏教学の世界的権威、今は亡き中村元博士は日本の仏教教団である阿含宗の機関紙、「月刊アーガマ42号」の紙上において釈尊が食事の後よく昼寝をされたことを微笑ましく指摘されている。

 当時の厳格な修行者からすると昼寝をする事はダラシのない事であり、怠惰なふるまいであったと考えられた。

 当然、釈尊に対しても次のような非難が向けられていた。

 ある日、サッチャカという修行者が釈尊に次のように言った。

 「ゴータマ(釈尊)よ。あなたは昼寝をする者である事を認識しているのですか。」

 釈尊は、次のように答えた。

 「私は托鉢から帰ってきて食事をし、その後、大衣を四つ折りにし、その上に、右脇を横たえ、自らの心の動きを観察しながら眠りに入る事があります。

 だから自分が昼寝をする者である事をよく認識していますよ。」

 サッチャカが言った。

 「ゴータマ(釈尊)よ。修行者やバラモンのある者は迷っているから、そんな事を語るのです。」

 釈尊は静かにこう答えた。

 「食後の昼寝をした、しないだけで、迷っているとか、迷っていないだとか、言えませんよ。」 と。

 この午後の睡眠をスペイン語でシエスタと言うが、 シエスタとはスペイン語で昼寝を意味する言葉です。

 正午から午後3時にあたる時刻に睡眠を習慣にしている国は世界に多数存在する。

 ヨーロッパではスペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシア、セルビア、モンテネグロ 。

 オセアニアではオーストラリア、パプア・ニューギニア、サモア。

 北中南米ではメキシコ、ブラジル、コロンビア、ハイチ、ジャマイカ、パラグアイ 。

 中東ではエジプト、イラン、オマーン、シリア。

 アジアではアフガニスタン、ミャンマー、カンボジア、インド、マレーシア 、チベット、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン。

 アフリカではケニア、ナイジェリア、シエラレオネ、ウガンダ、マリ、ブルキナファソ、エチオピア、セネガルなどの国々でこの午後の数時間の昼寝の習慣を採用している。

 日本において、このシエスタの習慣を採用するのは今のところ難しいかもしれませんが、例えば、昼食後に眠気を感じたドライバーが自動車やバイクなどで事故を起こすリスクを回避するためにも、このシエスタという習慣を見直すのも良いかもしれません。

 

参考文献

「眠りをめぐるミステリー 睡眠の不思議から脳を読み解く 櫻井 武 著  NHK出版新書」

「一流の人はなぜ眠りが深いのか 奥田 弘美 著 知的生き方文庫」

「自分を操る超集中力 メンタリストDaiGo かんき出版」

「自分を変える睡眠のルール 千田 琢哉著 総合法令出版」

「Sleep(最高の身体と脳を作る技術)ショーン・スチーブンソン著 花塚 恵 訳  ダイヤモンド社」

「睡眠不足は危険がいっぱい スタンレー・コレン著 木村 博江 訳 文藝春秋」

「月刊アーガマ 42号 阿含宗総本山出版局」

「寝ればゆるせる ゆるすいみん。 おのころ心平 主婦の友インフォス」

 

 

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睡眠の偉大なチカラ

 睡眠は脳を記憶障害。アルツハイマー病から守ることに対して、驚くべき効果を発揮する。

 実際に睡眠を充分にとらないと、アルツハイマー型の脳障害を誘発する恐れがある。

実に、睡眠には特効薬的な効能があるらしい。

 起きている時間帯に発生した脳に溜まっている様々な老廃物が、 睡眠中、 きれいに洗い流され、睡眠のチカラにより脳内の老廃物がきれいに除去される。

チベット仏教の最高指導者、ダライラマ法王猊下は

「睡眠は最良の瞑想である。」

とお説きになられている。

仏教の開祖、お釈迦さまは昼寝をされていた。

という記録がインド哲学、仏教学の世界的権威であられた、

今は亡き中村元博士によって説かれている。

現在でも世界各国で午後に昼寝、午睡をとる習慣がある。

世界的物理学者のアインシュタイン博士は一日に約10時間程度、寝ていたそうだ。

近年、ノーベル物理学賞を受賞した小柴博士も一日の睡眠時間が約10時間だそうだ。


参考文献

「アルツハイマーになる人、ならない人の習慣 ジーン・カーパー著 和田 美樹 訳  澤登 雅一 監修 Discover」

「スリープ・レボリューション 最高の結果を残すための「睡眠革命」   アリアナ・ハフィントン著 本間 徳子 訳 日経BP社」

「月刊 アーガマ42号 阿含宗総本山出版局」

「一流の人はなぜ眠りが深いのか 奥田 弘美 著 知的生きかた文庫」

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